神経症性障害①:パニック障害
1. 概要
予知できない強烈な恐れの感情が一過性、急激かつ反復性に起こる状態をパニック発作という。発作が反復するとまた発作が起きるのでないかという持続的な恐れが生じる。これを予期不安という。
発作が特定の場所でおこると患者はそのような場所を避けるようになる。これを空間恐怖という。パニック発作、予期不安、空間恐怖がともに存在し、しかも生活に支障をきたす状態をパニック障害とよぶ。
2. 症状
①動悸・頻脈
②息苦しさ・過呼吸
③このまま死んでしまうのではないかという強い恐れ
の3つが典型的である。(中核症状)
その他に、(周辺症状)
・めまいや吐き気
・手足のしびれ
・冷汗
・胸痛
・非現実感(離人感あるいは現実的喪失)などもみられる
3. 経過
パニック発作の誘因はなく、客観的には危険がない環境でおこる。のんびりしていたり、通勤中、場合によっては睡眠中におこることもある。患者は恐怖と自律神経症状が次第に高まっていくのを体験し、急いでその場を立ち去ろうとする。発作は1ヶ月の間に数回おこる。パニック発作が恐ろしく通勤や旅行中の電車や飛行機の中でおきたらどうしようという不安から1人で外出できなくなる。
長期経過をみていくと、うつ病を発症することがあり、また抗うつ薬が効果があることから、うつ病との関連性も考慮されている。
このようにパニック障害がうつ病を経過中に示す状態を共病性と呼んでいる。この疾患は全人口の1~3%程度にほぼ一定しておこり、特に30歳代の女性に多いといわれている。
4. 発症仮説
乳酸や炭酸ガスが曝露することによって引き起こされたり、睡眠中に引き起こされたりすることから、一種の脳の機能障害と考える立場もある。青斑核におけるノルアドレナリン作動性神経活動の過剰を示唆する者もいる。
5. 治療法
・精神療法
・行動療法(曝露反応妨害法)
・薬物療法
・ロフラゼプ酸エチル
②三環系抗うつ薬
③SSRI
参考文献:標準精神医学第6版