精神疾患の理解を深めるためのブックガイド

作業療法士経験があり精神疾患かつ発達障害当事者であるけん玉が作る精神疾患の理解を深めるためのブログ

統合失調症②:病型分類

1. 診断基準

 統合失調症は急性期の特徴的臨床症状、発病後の社会的または職業的機能の減退、および症状の持続期間によって診断される。

 急性期症状として、

(1)幻覚

(2)妄想

(3)まとまりのない発語(連合弛緩)

(4)ひどくまとまりのないまたは緊張病性の行動

(5)陰性症状のうち2つ以上が少なくとも1ヶ月間存在することが必要

とされる。

症状の持続期間は急性期症状の1ヶ月を含み、少なくとも6ヶ月以上でなければならないが、これには前駆期、残遺期も含まれる。

 持続期間が6ヶ月未満の場合は統合失調症様障害、1ヶ月未満の場合は短期精神病性障害とする。

 

2. 症状の概要

①陽性症状

・幻覚

・妄想

・思考滅裂

陰性症状

・無為

・自閉

・感情の平板化

 

3. 病型分類

①妄想型

 妄想型は最もよくみられる病型である。被害妄想が症状の中心で被害的内容の幻聴を伴うことが多い。妄想はしばしば体系化する。思考形式の障害、感情の障害、緊張病症状、陰性症状はそれほど顕著ではない。他の病型に比較して、発症年齢が遅く、人格水準は保たれ、予後は良いことが多い。

 

②破瓜型

 思考形式障害と感情の障害が顕著な病型であり、解体型とも呼ばれてきた。思考は解体しており、会話はまとまりがない。気分は変わりやすく、行動はしばしば思慮に欠け、予測しがたい。幻覚や妄想は一時的、断片的で体系化しない。発症年齢は早く、陰性症状が早期に生じ、予後は不良である。

 

③緊張型

 緊張病症候群が病像の中心である。興奮と昏迷の間を交替する。カタレプシー、反響言語、反響動作、拒絶症などがみられる。かつてはよくみられた病型だが、現在は先進諸国ではまれになっている。なお、DSM5では、緊張病は統合失調症だけでなく、うつ病双極性障害などさまざまな疾患に伴うことがあるので、統合失調症の病型ではなく、多くの疾患に合併しうる病態として扱われることとなった。

 

④単純型

 行動の奇妙さ、社会的機能の低下、感情鈍麻などの陰性症状が、潜行性に生じ進行性に発展するまれな障害とされる。幻覚や妄想ははっきりしない。明らかな陽性症状を欠くため、診断が難しい。

 

4. 症例

50代の女性、統合失調症

 結婚前は会社勤務をしていた。第2子をもうけた20代後半に発症し離婚後は実家の母と兄の世話を受けながら子育てをしてきた。ときおり体感幻覚や誇大的な妄想が二重見当識のように現れるが、人好きな性格もあって、表面的な対人交流は保たれていた。

 30代後半に病状の変化から過量服薬にて入院し、退院後に自己コントロール、生活管理技能、対人交流技能などの改善目的で外来作業療法が開始された。

 パラレルな作業療法の場では、初対面の相手に挨拶がわりのように妄想内容を話すため、本人への不利益を説明し、「その話は主治医と作業療法士以外にはしない」という枠付けをし、人好きな性格と上達した革細工の技能を活かして、他のメンバーにお茶を用意したり、革細工の道具の使い方を指導したりする役割行動を促した。生活管理については家計のやりくり、料理や弁当づくり、思春期を迎える子どもへの対応、干渉的な母親への対応など、いくつもの課題を作業療法の中で検討してきた。

 子どもが県外の大学に進学する頃には、寂しさから何度目かの過量服薬・入院をしたが、入院時には母親に代わって作業療法で知り合った友人が付き添い、心理的なサポートをした。現在は、年老いた母親の面倒をみながら、紹介した地域活動支援センターにボランティアとして通い、時々作業療法室にも近況報告に訪れている。